出版社：NTT出版　著者：西口敏宏

発行：2007年1月

この本は、名前はユニークですが、経営学、組織論の本です。以前から仕事の関係で、著者の西口教授にいろいろ教えていただいていることもあり、ここに、推薦したいと思います。
教授は、トヨタ等の自動車産業について研究されており、その成功の要因について、機能横断（クロスファンクショナル）チームと主査制度にあると分析されており、また、欧米各国の、特に国防分野における行政改革についても、このトヨタの成功を取り入れて進められている現状等について説明されています。私は、防衛省の出身で、現在出向で財務省税関に勤務しているところですが、西口教授の述べておられるところは、官民を問わず、どの分野にも当てはまるものだと思います。
人類の発展や成功は、ひとつには、科学技術の進歩が重要なことは当然ですが、一方で組織としての能力発揮が十分になされることも重要です。組織論は、まさに、その後者についての研究ですが、一見、単純に見える、クロスファンクショナルな機能間での情報の交換、議論がいかに現実的には容易でなく、かつ重要であるかといった点や、問題の解決には、可能な限り川上において対応すべきであるという源流主義等、その指摘は、明確で真理をついていると思います。単純で、簡潔な中に、組織論においても真理があるのだということが実感されます。
現在、経済危機の中で、わが国も厳しい状況にありますが、この本が指摘しているような方向で、組織、あるいはマネージメントの改革を進めればわが国の将来も明るいのではないかと思います。

評者：門司税関長　筒井和人

引用：表紙はNTT出版サイトから引用