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千年、働いてきました 老舗企業大国ニッポン

2011.3.13

 

出版社:角川oneテーマ21 著者:野村進

発行:2006年11月

九州大学は、今年創立百周年を迎えました。日立製作所を始めとして、大正の初期に創立され、今年百周年を祝っている企業も我国には数多くあります。世界で最も長い歴史を持つ企業は、西暦578年創業の金剛組であるという話は、ご存知の方も多いかと思います。聖徳太子の時代に四天王寺を建立した事に起源を持つこの宮大工集団は、世界最古のゼネコンと言っても良い集団です。千年以上続いている企業体は、日本にしか存在しないと主張する社会科学者もいます。
このように、日本は、長寿企業が多いという意味で、世界的に極めて特異な国です。ある統計では、百年以上続いている企業が十万社以上、二百年以上が三千社以上、千年以上続く企業が七社あると言います。しかも、その半数近くが建設業や製造業に関わる企業なのです。
本書は、百年以上の長い歴史を持つ老舗企業の中で、伝統のもの作りの精神を受け継ぎながら、世界の最先端技術を支えている19社を取り上げ、その長寿の鍵を解明しようとした意欲的なノンフィクション作品です。ケータイの重要な部品を作るメーカー、廃棄されたケータイから稀少金属を回収する都市鉱山企業、醤油醸造技術を基礎として羊から羊毛を容易に摂取する技術を輸出する企業、金箔の技術から種々の物質の表面に転写箔を形成する技術へと発展させた企業など、身の回りで当たり前に使われている先端技術を生み出してきた老舗企業がわかりやすく紹介されています。
持続可能性は、21世紀の人類社会の共通の課題です。日本の物作りと企業経営の中で脈々と受け継がれて来た持続可能性の基盤となる精神を実例を挙げながらいろいろな側面から活写している本です。「企業活動とは何か?」、「社会的責任とは何か?」を考える良い機会を与えてくれる好著と思います。
最近、本書で取り上げられている企業が破綻しました。伝統の精神から外れたのが原因なのか、世界の流れについて行けなくなったのか、日本流を続ける事の難しさを考える良いタイミングであるかもしれません。

評者:九州大学 理事・副学長 安浦寛人

引用:表紙はKADOKAWAサイトから引用

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