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ぼくはアメリカを学んだ

2009.12.12

出版社:岩波ジュニア新書 著者:鎌田遵

発行:2007年1月

情報社会。世界が情報を共有し、いつどこでも世界の情報を獲得することができ、どこの誰でも情報を発信できる。そんな情報に溢れた今の社会はそう呼ばれている。
果たしてこの社会が良い方向に変化しているのかどうかはまだ分からない。この度の技術革新による変化が現れるのはもうしばらく先のことだろう。
ただ、言えることは、現在の社会では、行動することの大切さ、そして行動と知識の重要な関係が、分かりにくくなった、ということだ。
かつては情報を獲得するためには実際に見て聞いて触れる必要があった。
言い換えれば、確かな情報は行動と一体であり、深い知識は体験と一体であった。ただ誰かから聞いたり雑誌などで見ただけの情報などは、ただの噂程度の価値でしかなかった。
この本の価値は、まさにその重要性を感じることができるところにあると言っても過言ではない。
17歳にユーラシア大陸を一人で横断し、その後アメリカへ留学したこと、それらが著者自身の体験談として書かれている。この本の内容は簡単に言えば、たったそれだけのことだ。
しかし、体験によって書かれていること、そしてその壮絶な、著者自身の言葉を借りれば、「激動」の体験が、彼の知恵そのものになっているということ、がこの本に大きな価値を与えている。
体験から知り得た各国の実態、特にアメリカ先住民の実態は、情報の波に乗って流れているものとはまったく違う。この本を読んだ読者はそう感じるのではないだろうか。そしてそれはまさしく著者自身が感じたことではないだろうか。
さらに読者は、彼の経歴から受ける印象と本から知る実際の経緯とのギャップに、体験することの大切さを学ぶだろう。
そして、その学んだ大切ささえも、著者の体験に裏付けされた知恵の前には何の価値もなく、我々が、いかに体験もしていないでその情報を知識と誤認し、ひいては価値ある体験も知恵も持ち合わせていないことを痛感するのだ。

評者:建築デザイナー no.d+a代表・TRAVELERS PROJECT主宰 野田恒雄

引用:表紙は岩波書店サイトから引用

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