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素数の音楽

2009.12.25

出版社:新潮社 著者:マーカス・デュ・ソートイ

発行:2013年10月

数学はお好きですか? 残念ながら私には、数学はおろか算数の時代から得意だった記憶がない。もちろん問題が解けて嬉しかった記憶が全くない訳ではないが、基本的に数学嫌いであり、学生時代の暗く重苦しい記憶がこびりついている。未だに暗算は苦手だし、難しい数式を見ただけで脳の真ん中あたりが熱くなり、思考が停止してしまう。数学なんてできなくても生活に支障はないし、電卓やパソコンが計算してくれるからと、半ば開き直って生きており、「数学の美しさ」を実感するなど、もはや来世に期待するしかない。
そんな私が齢(よわい)40を過ぎて、生まれて初めて数学の「面白さ」、「深遠さ」、「美しさ」の一端を味わうことが出来たのが、この『素数の音楽』である。
素数は、2、3、5、7、11、13、17、19、…と続く、1とその数自身以外に正の約数がない自然数である。素数を使えばほかのあらゆる数が作れるため「数の原子」と呼ばれる。この素数の出現パターンに何らかの秩序、規則性を見出そうと、これまで数多くの数学者が挑んできたが、19世紀にその秩序を解明したとされる「リーマン予想」は、現在に至るまで証明されていない数学界の超難問となっている。本書は、この「リーマン予想」を軸に、遠くギリシャ時代から現代におけるコンピュータのセキュリティの仕組みまで、素数をめぐる数学史を、その時々の数学者を通して展開したものである。
少々分厚い本だが、タテ書きの平易な文章で、難しい数式はほとんど出てこない。単に数学者の業績だけでなく、時代背景や天才、奇才の横顔が活写されているため、思わず引き込まれて一気に読破した。この本を読んでから、遅まきながら数学に興味が湧いた。もし、高校時代にこんな本に出会っていたら、もっと楽しく意欲を持って数学を勉強できたに違いない。なお、『素数の音楽』で数学が面白いと思った文系のあなたには、『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン著、青木薫 訳、新潮文庫)もお薦めです。

評者:九州経済調査協会 調査研究部長 田代雅彦

引用:表紙は新潮社サイトから引用

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