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磯崎新の建築・美術をめぐる10の事件簿

2010.9.13

出版社:TOTO出版  著者:磯崎新、新保淳乃、阿部真弓

発行:2010年5月

月に3~4冊の本を読みたいと思っているが、思ったように進まない。それでもこの半年余り、面白い本を数冊読んだ。是非、若い人に読んで欲しい本のひとつとして、磯崎新氏著『建築・美術をめぐる10の事件簿』を紹介したい。
「10の事件簿」と言うように15世紀から20世紀までを10章に分けて書かれており、イタリアにおける500年間の建築とデザイン、建築と美術史の流れを相対的に深く書き下ろしたもので、新保淳乃氏(千葉大学、武蔵大学非常勤講師)、阿部真弓氏(独立行政法人国立美術館 国立新美術館勤務)と磯崎新氏の対談が本となっている。15世紀から始まったとされる建築書について、イタリアの歴史を追いながら美術と建築の双方を論じ、芸術、歴史を振り返る事によって、その次の世代がどのような影響を受け、何を造ろうとしたか、思考の過程は読めば読むほど、その世界に引き込まれ、そして、現代建築や美術についても対話は続いている。同時に、磯崎新という知の巨人が創造を巡らせる時に、いかに難解なことを歴史的な背景をベースに考えているかということが読み取れたが、残念なことに、現在の私の知識だけではどうも難解過ぎて、一度や二度読んだだけでは理解できない。ただ、建築を造る時に過去の歴史を振り返り、その時代を読み取りながら作業をしなければ何も創造できないということを改めて深く知らされた。氏とは、同郷ということで大変親しいお付き合いをさせて頂き、またお話を伺う機会も多々ある。以前、氏との対話の中で、「建築という行為により時代にアンカーを下ろす」という話をお聞きしたことがある。つまり、彼は建築という手法を使って、この500年のイタリアの歴史を汲み取り、未来に向かって探査するような作業をしているのではないかと思う。あとがきに、「まだ事件現場にいます」と書かれているが、建築を通じてどのような未来を予測するか、大いに興味を抱かせられる。一度読めば二度、二度読めば三度と、深く知れば知る程、面白くなる本であるので、是非、若い人にオススメしたい逸書である。

評者:首都大学東京戦略センター教授 青木茂建築工房 主宰 青木茂

引用:表紙はTOTO出版サイトから引用

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